**1992年10月**

<<<PY(ブラジル)>>>

JH3QNHのPY(ブラジル)みやげ話し
                   JH3QNH/山下貞夫

 今回も断っておきますが、全く言葉(ポルトガル語)がわからないまま現地入りして見聞して来たことを
書いていますので、間違ったことがあるかも知れません。お気付きの点がありましたらお知らせ下さい。

 今年2月に南米チリ(CE)に行ったのに、また南米に行く機会に恵まれました。CEへの計画時にほんの少しだが
可能性があったのでPYでのテンポラリ・ライセンスについて調査しており、ここでは許可の可能性がないと結論が
出ていたのでした。しかしやっぱり根っからの無線屋さん。電波が出したい一心で、出発前に以前に14MHzでPYの
日系人から聞いていたリオデジャネイロ(以後リオと略す)在住のPY3ZYM/PY1(麻生田さん)にコンタクトした
ところ大歓迎を受け、大変うれしい返事をいただきました。その内容は ・・・@PYではゲストOPがOKであり、
電波を出すことはできる。AJAPAN INT CONTESTを「PQlJ」でやろう。B10月30日からPYφFに一緒に行かないか
C麻生田さんも「キ」付きの好きものである。・・・という内容で、Bについてはヨダレがベロベ口出るような
話しではあるが、私が10月31日出発なので残念ながら諦める事となるが、まあとりあえずはバンザイである。

<PYについて>
 ブラジル連邦共和国は南米大陸の多くを占め、熱帯から温帯まである。今回訪れたリオは亜熱帯に属しており、
きっと蒸し暑いだろうと覚悟して行ったがどっこい、異常気象とやらで例年以下の気温と、私の行動通囲が
海沿いの地域だったので湿度もたいしたことはなかった。でも35℃を越えるとさすがに暑く、体がなれるまでの
1週間はつらかったです。
 公用語はポルトガル語で一般に英語は通じませんでした。類似のスペイン語は一部可です。(サンパウロヘ
行けば日本語だけで生活できる地域があるそうな)
 電気は約120V/60Hzと言われてますが、実際は昼夜で変化しており特に夜間は130V以上になり機器の
つけっばなしは要注意です。コンセントは丸2ピンですが、ほとんどのコンセントは日本の平2ピンタイプも兼用で
入るようなものになっており、リグはそのまま使えます。(電源電圧の切り換えをお忘れなく)
 通貨はCR$(クルゼイロ)で世界有数のインフレのため値段はしょっちゅう変わります。一か月滞在中の
インフレだけでも25%を越えており、年間1000%と言われるのも納得できます。これじゃ銀行には誰も貯金しない
だろうと考えたのですが、利息にはインフレ分のプラスがあるそうです。他にもいろいろ似た話しがあるんですが、
タクシーはメーターをしょっちゅういじらなくてはならないので料金表示はなく、走行距離に応じたポイントを
表示し、支払は換算表を見て行います。値上げはこの表を変えるわけです。ですからあるタクシーは40年以上前に
製造されたメーターを使っていました。
 自国で生産できるものは基本的に輸入は禁止されているので、自動車や家電はブランドこそ「VW」・「TOSHIBA」
ですが、マナウスやサンパウロで作ったものです。意外にも「TOYOTA」車が少なく欧米系が圧倒しています。
自動車はアルコール車がたくさん走っており、あちこちでアルコールの排気ガス臭がし、歩いていると気分が
悪くなってきそうです。ガソリンは¥50/L、アルコールは¥40/Lと思えばいいでしょうか。
 走っている自動車はくたびれた物が多く、高級庶民は中古車を購入し修理をしつつ走っており、これを見てると
日本の賛沢さがつくづく感じられました。(私の車はまだ10年は乗れる)
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南米サミット会議(左からJA1FQI,JH3QNH,PY3ZYM,JA2PLT)

<治安>
 PYに入国する少し前にリオ一番のビーチで集団オイハギ事件がありました。これは貧民多数がトラックでビーチに
乗り付け、浜沿いの街道を通るバスに群がり料金箱や乗客から金品を略奪したというもので、センセーショナルに
報道されたためその後観光客のキャンセルが相次いだそうです。そのためか、11月中は集中取締が行われ街中警官
だらけでした。こんな最中でも集団で商店を軒並み順番に強盗していく事件もありました。
 聞くところによると、警察官は誰でもなれる(?)そうで給料も安いため全く信用出来ないそうで、クリスマス前
には盛んに因縁をつけて暗に金をせびるそうです。
治安が悪く、日常的に強盗、ひったくりがあるんですが、警官の目の前で起こっていても知らぬ顔をするそうです。
「だって弾が当たると痛い」からだそうな!!
 私も9日目に銀行強盗に遭遇しました。この時はガードマンが発砲しガラス壁を壊してましたが、お金は盗られた
ようです。こんなのがあっても人だかりは出来ず、知らん顔して通りすぎて行きます。

<Boate>
 ボアッテと呼ばれる店が所々にあり、未明までにぎやかにやっています。ここは一応、飲み屋さんなんですが、
小さな舞台では衣服をほとんど身につけない踊り子がクルクル踊っており、店員が適当にいます。店には若い女性客が
あふれており、男性客が来るといろんな事を言って寄ってきます。「火を貸して!」「今晩は!」・・・あとは何を
言ってるか言葉がわからない。”ツウ”はここを「自由恋愛所」と解説していましたが、お互い交渉が成立すれば
何処となく出ていきます。この交渉には店は一切介入しないし、女性達もフリーなのです。
 どこかの国みたいに、陰湿な雰囲気は一切無く、あくまでも底抜けに明るいのがすばらしいです。
 JE3QBGへ。相場はUS$50〜1OOだそうで、これ以下も交渉次第。Boateは高級な所ですから、一般庶民は来れません。
庶民用にはいわゆる”ストリートガール”がおり、セントロの街道にたくさんおられます。オカマもいます。こちらは
US$5くらいからあるそうです。こういう付近には必ず”HOTEL”があり、このホテルは日本のその手のものと同じ
ものです。尚、この項は他から聞いたものを文書化したものです。誤解なきように!!

<電話ごっこ>
 何処も同じと見るのか、PYでも2m等の電話に多くの局がおりその内容はJAと同じレベルだそうです。1000m高くらい
のリオ一番の観光地でもあるコルコバードの丘やポン・ジ・アスーカには2mのレピータ用アンテナが林立しており、
さぞや良く飛ぶことだろうとうらやましく思いました。
 資格試験のレベルはJAよりなお低く、電話級でPYの上級がいけるそうです。
が、日本人は受けれませんので、Wの免許をベースに時期と金とコネを駆使して取得するしかないようです。運が
良ければ得られるが、現在は大変難しいそうです。
 JA−PY相互運用協定の話が座礁していますが、水面下ではこの前後に登場の各氏らにより努力が行われており、
数年内には又話が出てくる可能性があります。

<PQ1J>
 PYではある運用実績をもとに特別コールサインが申請でき、PQ1Jはリーさん(コール忘れた。PY1??)のもので、
WWとJA INT CONTESTが対象の限定免許でした。あと、来春のJA lNT(CW)?に使用できたと思います。ここでは、
アミーゴ(友人)は問題なくゲストOPが出来ます。
 今回はリオ在住のPY3ZYM、JA1FQI局のご好意で仲間にいれていただき、運用することが出来ました。
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後列左から PY1BVY,JA1FQI,JH3QNH 前がPQ1Jの持ち主
 運用場所はリオの湾の向かい側にある、ニテロイ市のPY1BVY(ロナルド氏)のシャックから行いました。
ロケーションは少し前の「59」誌に紹介されておりますが、高層アパート(20階程)の屋上に上げたPY製
八木からです。PY1BVYはそれなりに著名人なようで、’82にPYφTA。’83にPYφFE。’87にZYφSBでペディを行い、
160m界では世界のトップで君臨しているつわもののCW好きのオッサンです。
雑談中にも一緒にトリニダードに行こうと誘われましたが、船に乗って往復1週間はきついですよね。
 JAへのコンディションはAM4時頃からパスが開けるので、夜10時頃に彼の家に行きリビングで雑談をしつつ、
交代でシャックに入りJAを探していました。日の出頃になるとJAからはヨーロッパや同じ南米のLUも聞こえなくなり、
PYだけになるみたいですね。それまではヨーロッパに向いてたアンテナが一斉にこちらに向けられるのか、
ウジャウジャと呼んで来ます。それまでLU局に先を越されていた局数もどんどん追い上げ結局600局を越しました。
これは前回一位になった記録を越しており、今年もMM部門南米一位は確実です。

<イグアスの滝>
 帰国直前に一泊旅行で南に2000Kmほどの、LU(アルゼンチン)、ZP(パラグアイ)、PYの3国が接する付近にある
世界最大の滝、イグアスヘ行きました。日本の滝は見上げて露光しますが、ここは見下げて観光する所です。滝は
山から落ちてくるのではなく、なだらかな大地を流れる大河の河部分だけが大きく陥没し、この段差が滝になって
いました。「つ」の字型をしており、全長5Km、最大落差100mとなっています。対岸はLUです。
 上流は浅くゆっくりした流れですが、茶色に濁ったドロ水がlOOmも落ちると下ではもの凄いしぶきが上がり、
それは滝の高さ以上になっています。このしぶきによって一日中虹が見えます。
 滝周辺は自然公園になっており、樹木が覆い茂り、まるで比叡山のサルみたいに人なつっこいアリ食いみたいな
動物や50pもあるトカゲ、オウムがいました。
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世界一 イグアスの滝

<イタイプー発電所>
 イグアスの滝から約20Km北にある発電所で、ZPとの国境パラナ川に架けたダム(総延長8Km)は琵琶湖の2倍の
貯水量があるそうで、総発電量は126億Wと世界一です。この電気は二国で等分してますが、使い切れていないようです。
 観光客にはゲートで説明映画を見せてくれ、専用バスでダムの上下を案内してくれます。だから知らないうちに
ZPに入出国しているんですが、なにもありません。この二国にまたがる案内がなんと無料なのです。
 ちなみに、イグアスの滝の川とダムの川は別のもので、それぞれの下流で合流しています。
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JA1FQIファミリー
今回は無線機なし(正確にはエレキーは持って行った)の旅だったが、PY3ZYM&PS7ZMA麻生田夫妻。
JA1FQI/谷本氏のお世話でFBにQRVでき、PY現地局の方達ともアイボールできたことを感謝します。
 CEに引き続き、Radio is a King of Hobbies であることを感じました。

                                (おわり)


(この記事は1993年1月京都クラブ会報No.273に掲載されたものです。)


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  Last Update May 12,2000