3W6JJ 運用記
JA3ART/海老原和夫
【お誘いのメール】
平成10年8月23日から8月26日までの4日間の短期間ではありましたがベトナム・ホーチミン市(サイゴン)から
3W6JJを運用する機会がありましたのでレポートいたします。
7月13日朝、いつもの様に勤務先で電子メールを開けると、JA3UB三好さんから「8月にベトナムへ行きませんか」の
お誘いのメールが入っていました。 私は8月全部を夏期休暇としていましたので、即「行きます、宜しく」と返事。
日程調整や現地ベトナムでのライセンス取得などの諸手続きは、今回でベトナム行き9回目という三好さんに全てお願いする
ことで、ただちにビザ取得の書類や写真、局免許(従免や英文証明は不要)のコピーなどを送付。
ライセンス料の100ドルは
現地で直接PTTに支払うとのこと。
【参加メンバー】
*JA3UB三好さん(3W6UB/3W6TV)
今回で9回目の訪越。 航空券、ライセンス、持参するRIGなど、全ての手配をしていただい
た。 9年前のXV2A開局をコーディネート。
*JA2BWH杉澤さん(3W6BWH)
JASTA(日本アマチュアSSTV協会)事務局長。 今回の訪越第一の目的であったFirst
Ever SSTVの運用を行う。
*JA4HCK馬場さん(3W6HCK)
鳥取市から参加。 なかなかユニークで温厚な人柄の好青年。 自営業で独身。
*そして私JA3ART(3W6JJ)の4名です。
【出発】
8月22日、午前9時に関空国際線出発ロビーで初めて4人が顔合わせ。 全員を知っているのは
三好さんだけで、他の3人はこの日、初めて会った訳です。
ここで、三好さんが関空まで運んでこられたトランシーバー2台とリニアーアンプ2台を
UB/HCK/ARTのスーツケースに分散してパッキングをする。
JA2BWHさんは、SSTVの機材をすでに横浜でパッキング済みです。
KIX午前11時30分発ベトナム航空(VN941便)のBー767は定刻通り離陸。 4時間45分の
飛行時間でタン・ソ・ニュット空港に着陸。 ピンク色の青ザイがユニフォームのアテンダント・クルーのYLさんも
なかなかFBでした。 横風で着陸したのか、接地の瞬間、機体の方向がかなりよれて一瞬、ドキッとさせられました。
また、タキシング中には滑走路脇にカマボコ型をした軍用ヘリの格納庫が多数、目に入りました。
バスに乗って3分位で到着ロビーへ。 いよいよ入国審査です。
【ベトナム入国】
到着ロビーとは名ばかりで勿論冷房も効いていません。 照明も暗く、警備している空港職員(軍隊?)も
大変いかめしい感じで社会主義国の雰囲気を感じました。 入国審査のカウンターは3ケ所ですがなかなか列が
進まず20分程かかり、やっとスーツケースをピックアップ。
いよいよ税関検査です。 うしろから、前の人の検査状況を見ているとかなり厳しそうです。 いよいよ私の順番
です。 言われる通りスーツケースをレントゲンに通す。 もう一度、通せとの指示。 やはりHFのトランシーバーが
ひっかかったらしい。 指示どおりスーツケースを開けIC−725を取り出したがまだ有るだろうと言われ、アンテナや
バッテリーケースをはずして本体だけになっているIC−3Nまで取り出すことになりました。
これらの作業は検査台が無いのでコンクリート床の上です。 冷房が無く蒸し暑く中腰ですのでこれだけで、もう汗ダク
です。
検査官(YL)とのやり取りは勿論英語ですが、ベトナム語なまりがひどく聞き取るのに苦労しました。
書き直した税関申告書が行方不明になったり、パスポートが何処かへ行ったりでボンドの書類を作って手続完了まで
2時間もかかってしまいました。
税関検査のカウンターから外へ出た時、ガラス越しにJA4HCK,馬場さんがまだカウンターでやり取りしているのが
見えました。 結局、3人のスーツケースの無線機全部がボンドされた訳です。
検査官の説明では、運用許可証を持参すれば明日にでも引き渡すとの事でした。 空港の外にはPTTから3W6AR,
Mr.Aiさんたちが迎えにきてくれており、そこで簡単な挨拶をして一緒に迎えのバスでホテルまで行き、チェックインの後、
PTTへ挨拶に伺いました。
いよいよ、明日からベトナムでの運用です。
【無線運用】
PTTでの校長や職員のかたたちへの挨拶が終わった後、ここPTTのXV2Aから運用する人たちが必ず経験する各人の
コールサインがエッチングされたプレート(20cm X 30cm)が前PTT校長の3W6AR,Mr.Aiさんから手渡された。
私も3W6JJと刻まれたものをプレゼントされました。そのセレモニーの終了後、これからの運用に備えて無線設備の
チェックです。 設備の概要はトランシーバーがIC−760,IC−726,IC−750,FT−747、
リニアー・アンプがTLー922、IC−2KLで,そしてアンテナはナガラHX−330,3.5/3.8/7用
ダイポール、5素子50メガ用八木などが30m高の屋上にあがってます。 だだ、同軸ケーブルが全て3C−2Vで
あるのが少々不安なのですが、UBさんのお話では、これらの同軸は全てJAから持参したもので、数百メーターのものを
手荷物で運び込むためには、やむなく細いものにせざるを得なかったそうです。
IC−760にはTL−922が接続されていましたが、どうもスタンバイ回路のリレーが焼けている様で、急遽
TL−922をIC−726に接続替えをするハメになりました。 SSTVの周辺機器も再度セッティングのやり直しです。
明るい間に屋上に上がりアンテナを点検。 3.5/3.8/7のDPのSWRが2.5と少し高いが、まあ〜、何とか
使えそうです。
屋上に上がってみて驚いたのですが、すぐ目の前には業務用(監視用)ログぺりが有るは、エレメント長の違ったダイポールや
AWX,U/VHF用ディスコーンなど、アンテナのオン・パレードでした。
この建物はホーチミン市での電波行政の中枢
なので当然なのでしょうが。
今回はベトナムから最初の運用となるSSTVが全世界から注目されていることもあり、設備チェック後、早速JA2BWH
杉澤さんによる3W6TVの運用が始まりました。 ファースト・エバーQSOは、東京ビッグサイトのハムフェアー会場
特別局の8J1HAMでした。
私自身、SSTVのQSOを実際目にするのは初めてでしたが、1QSOに7〜10分くらい掛かっており、1分間に
2〜4局のQSOが可能なCWやSSBに慣れている者にとってはチョットまどろっこしい感じでした。 何万ドルもかけて
行われる大がかりなDX−PEDIでSSTVの運用が行われない理由のひとつが、この辺にある様に感じました。
SSTVが運用されている間、私たちは何とかIC−760のリニアー制御用リレーを修理しょうとトライしましたが、
部品交換が必要であることが判り、結局、IC−760は、以後ベアーフットの100ワットで運用する事となりました。
8月22日は結局、SSTVのみの運用で夜8時頃QRTしてホテルへ戻りました。
2日目の8月23日は前日の疲れもあり、ゆっくり朝食を摂り10時から町へ出てこれからの必要なもの、飲料水、
カップラーメン、半田ゴテ、半田、その他工具やビニールテープなど、不足分補充品を買いだしに行き、無線運用は
午後からとなりました。
SSTVの3W6TV(OP−JA2BWH)は、終日14/21で運用。あとの3W6UB三好さんや3W6HCK
馬場さんたちは、オペレートする事にはあまりこだわらず、もっぱらベトナムの雰囲気を楽しんでいる様子です。
夕方からは、私も21ssbで運用し、2時間の運用で約120局とQSO。また、こちらからは送信は出来ないが、
18時(20時JST)に4360kcを聴取するSKEDでJA3ASUさんの信号を339で確認出来ました。
3日目の8月24日も私は午後から夕方まで21ssb/cwを運用した後、18時から、現地の人たちでアマチュア無線に
興味を持っている人たちを対象に簡単なレクチャーとSSTVのデモンストレーションを3時間程度行いました。
三好さんと私で事前にJAから英文で書かれた資料を準備しておきました。また、在ホーチミン日本総領事のJA1YV
松永氏が挨拶に来られたのには驚きました。この日は、21ssb/cwで270QSOです。
4日目の8月25日は、折角ベトナムまで来たので少しくらいは観光をと、いう事で「メコン河・クルージング」の1日
コースに出かけました。(昼食付きで48ドル) お天気も最高にFBで、日本語ガイドのコースが満杯のため英語ガイド
の方に参加したのですがオーストラリアから来たという母娘親子と一緒のグループになりました。結構気さくな親子で、
1日をみんなで楽しく過ごす事ができました。
この日は、ツアーから帰って夕食の後の19時頃からの運用となり、SSTVの方が思った程QSOが出来ていないので、
特別にオールナイト運用を許可していただきましたが、JA2BWH杉澤さん以外の3人は22時過ぎにホテルへ戻りました。
この日のQSOは7/14のCWのみで60局程度にとどまりました。
このあたりから、JA4HCK馬場さんの体調がおかしくなり、夕食に行った日本料理屋さんでも、殆ど食欲が無く熱も
ある様です。ホテルへ戻り、持参の体温計で検温したところ39度もありました。 そして、下痢、嘔吐、腹痛です。
私の持参したJA3ASU狭山先生調合の解熱剤、抗生物質と下痢止めを飲み、熱さまシートで冷やし、結局、丸1日半、
ホテルで寝たっきりでした。 どうやら、食あたりだった様で投薬も的確だったので、軽くて済みました。 一時は、
明日が帰国日なので、心配したのですが帰国準備をする頃には、ほぼ回復することができました。
5日目の8月26日は、運用出来る最終日なのです。11時から14時まで21SSBでの運用で150QSOでした。
結局3W6JJの4日間の7/14/21での運用は、600QSOに終わりました。また3W6TVのSSTVでの
運用は190QSOでした。 午後はタクシーをチャーターして地元局の3W6AR,LI,KAを訪問しました。
【ベトナム出国/帰国】
帰国は、ベトナム航空VN−940便で23時15分のフライトです。 旅行社の迎えの車で21時に空港に到着、
チェック・インと出国手続きですがJA2BWHさんがいつまで待っても出国ロビーに現れません。 結局、私たちとは30分
遅れで落ち合い場所のコーヒーショップへ来られましたが、原因は入国時の税関申告書に記載してあったノートパソコンをPTTに
寄付した事に対して、それに50ドルの税金の支払いを求められたそうです。 30分の交渉の末、免除にはなったそうですが・・・
帰りの便も時間通りのフライトで、定刻よりやや早く8月27日午前6時に関西空港に戻ってきました。日本への入国時、なぜか
JA3UB,三好さんがスーツケースを開けられて荷物チェックをされています。
実は、PTTに帰国の挨拶に伺った時、3W6AR,Mr,Aiさんたちからお土産にとベトナムの果物で、きれいな赤紫色の
ソフトボールくらいの大きさの「ドラゴン・フルーツ」をどっさりプレゼントされました。 ですから、4人のスーツケース
にはこの果物が各々7〜8個づつ入っているのですが、みんな申告が面倒なので黙って通関する事にしていたのです。
それが、三好さんのところできっちり見つかってしまった訳です。 やばいなあ〜、と後ろから見ていたのですが、税関職員との
やりとりが聞こえ、数が少ないのと個人で消費する事などで没収される事無く無事通関できました。 後ろで順番待ちしていた
JA4HCKと私はフリーパスでした。 そして、次回はBYへ行こうということで、空港で73となりました。
【現地局訪問】
* 3W6AR,Mr.Aiは元このPTTの校長で現在はリタイアしておられますが、PTTに隣接する官舎に奥様と住んで
おられます。 今回の免許申請の窓口になっていただきました。
アイコムの100ワット機とワイヤーダイポールで14/21で
時々声が聞こえています。 若い時に東ドイツへ留学されていたので英語よりドイツ語の方が堪能です。
* 3W6LI,Mr.Hauは現在3Wでは一番アクティブな局でしょう。 よく14/21SSBで彼の信号を聴く
ことができます。
3階建鉄筋コンクリート造りの超豪華な居宅(1階は総大理石張り)の3階にシャックがあり、八重洲の100ワット機と
ナガラのHX−330を屋上にあげています。 軍用ジープと250ccのバイクを所有していますし、息子さんを東京の
大学に留学させていますのでベトナムでは超裕福なのでしょう。 帰国時、息子さん宛の郵便物を託されましたので、1週間程後に
息子さんと電話で話す機会がありました。
ベトナムの郵便事情はまだまだ悪く、航空便でもJA間で2週間もかかったり最悪は行方不明の場合も有ります。(V73と
あまり変わらないですネ)
* 3W6KAは、クラブ局で「KASATI」という会社(軍需関連?)の屋上塔屋に設置されています。八重洲のトラン
シーバーとヒースキットのSB−220リニアーが置いてありました。アンテナは40m位の高さにクリエートのトライバンダーが
上がっていました。 隣接地は元米軍のアンテナ・ファームですのでロケーションは抜群です。
どうも、このシャックが「59」に広告がでている3Wでのレンタル・シャックの様です。wwwの
DX Shack Vietnamの広告内容ではその利用料金はコンテストのオールナイト運用で40ドルとなっています。
【その他諸々】
[1]ベトナム入国時にボンドされた無線機1式が受け取れたのは、帰国日の8月26日でした。 当初の約束通り、翌日、
ライセンスを持って行ったのですがまだ書類が出来てないので明日来い、との事。 この繰り返しで最後にPTTの職員の方に
行ってもらって、やっと受け取ることが出来ました。 当初の予定通り、旨く通関出来ておれば、ホテルの部屋(ベランダ付きの
6階でJA方向はGOOD) から24時間運用を予定していたのですが・・・これらの無線機は全て現地のPTTへ置いてきました。
[2]アマチュア無線に対する電波法や制度がまだ整備されていません。現在やっとIARUへの加盟の話しが持ち上がって
きたところです。1年間のライセンス料が100ドルは現地の人たちにとっては、まだまだ大変な金額です。それ以上に無線機や
アンテナの入手が大変で、現状は外国からのドネーション が頼りです。同軸ケーブルすら入手困難です。QSLビューローが
ないので、郵便料の負担も大変です。 3W6LIが私にJA分のダイレクトでのQSL約100通を託しましたが、切手は
貼られていませんでした。 HI。 絵葉書1枚のJA宛エアーメイル郵便料金が1万ドンでした。(100円)
[3]ホテルでの飲み物の値段
Vanila Ice Cleam 2.75 ドル Coffee 1.75 ドル
Espresso Coffee 2.60 ドル Coca
Cola 2.60 ドル
今回のベトナムからの運用は短期間では有りましたが、同行の
JA3UB、三好さんが今回で9回目の訪越という
ベトナム通であったため、結構いろいろなことを吸収し、貴重な経験をする事ができました。
ベトナムでのアマチュア無線運用未経験者ばかりでの運用は、やはり、まだまだ色々なトラブルが有る様で、下手を
すれば電波法違反などで「告訴」もあるそうです。
私自身、初めての社会主義国からの運用でしたが、やはり少々堅苦しい雰囲気を感じました。
しかし、食べ物は美味ですし、YLは美人が多く、そして日本人と顔立ちがそっくりなのには驚きました。
次回は無線を離れて、ゆっくりグルメと観光だけにもう一度行ってみたい国ではあります。
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(おわり)
(この記事は1998年10月から1998年11月京都クラブ会報No.338-339に掲載されたものです。)
==写真集==
PTT3階のシャックより。OP.JA3ART 京都市交通局のバスが走っている。「烏丸御池・52」の標示もそのまま!
メコンクルージングの途中の昼食で出されたカラアゲ。(エレファント・イヤー・フィッシュ)
3W6LIの個人局。Mr.HanとJA3ART 3W6KA(クラブ局)OPは3W6LI,Mr.Han
街頭の散髪屋さん 3W6LI,Hanさんの家にて。左からJA4HCK,3W6AR,3W6LI,JA3UB。
SSTVを運用中のJA2BWH ホーチミン市内の有名な風景。バイクの多さには圧倒される。
飛行機から到着ロビーまで運んでくれるバス
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Last Update Nov. 12,2000