京大11月祭参加 京大植物園懇談会
テーマ ー京大植物園のグランドデザインとはー

2005年11月23日(水・祝)13:30〜15:30
理学部2号館113号室

 11月23日は、大盛況だった午前中の湯本ガイドによる京大植物園観察会スペシャル『鳥と木の実』の興奮冷めやらぬまま、午後には『京大植物園のグランドデザインとは』と題して懇談会が行われた。
パネラーには生態学の湯本貴和さん(総合地球環境学研究所)に加え、同じく総合地球環境学研究所から哲学がご専門の安部浩さんにお越しいただき、安部さんの司会の下で、生態学や生物学の立場からだけではなく一般市民や人文科学の立場から見たときの京大植物園の魅力や存在の意義、さらには保全の主体や方向性をめぐって活発な意見交換が行われた。
理学研究科植物園運営委員会からの出席はなかったものの、学内外の参加者からは、「考える会」の観察会のあり方への批判も含め、多方面からの意見や感想が提出され、今後の課題が再確認された有意義な集いとなった。

報告:大石高典(京都大学理学部動物学専攻)

懇談会まとめ

 「京大植物園のグランド・デザイン」と題する今回の懇談会において、私たちは参加者全員による対話を通して、各人が植物園に対してそれなりの仕方で抱いていた先入見を是正し、それをより良いものにすべく育んでいくことを目指した。  まず京大植物園の持つ多様な意義が、1.研究者にとっての意義、2.動植物にとっての意義、3.市民にとっての意義といった観点から次々に明らかにされた。次に、これらの多様な意義に目をつぶり、あまつさえ無きものにしようとする現在の植物園の管理のあり方、およびその背景にある自然観・思考方法が批判的に検討された。当懇談会の成果としては、特に次の二点が挙げられるように思われる。
第一点は、「人の手が入っている身近な自然」の持つ「良さ」を、市民のみならず、研究者もまた認識し、それを学問的に解明する必要があるということである。つまり京大植物園の存在意義を考えることを通して、私たちは、自分たちが知らず知らずのうちに「どこか遠くにある原生的自然」を自然の範型と考えてしまっていること、別言すれば、自分たちが遠くばかりを見ていて近くが見えていない視野狭窄に陥っていたことに気づかされたのである。
第二点は、「自分にとって価値のない所有物は、それが自分の所有物であるという理由でもって、ないがしろにし、消滅させることが許される」という考え方に対しては、いかにして説得的な反論が可能かということである。その為には、私たちは、ジョン・ロックを初めとする様々な所有論の議論からも大いに学ばねばならないであろう。

司会:安部 浩(大学共同利用機関法人 総合地球環境学研究所)


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