「理学研究科植物園の管理運営について」への見解


2004年12月22日


 さる2004年10月21日、京都大学理学研究科HPに「理学研究科植物園の管理運営について」と題した京都大学理学研究科植物園管理運営委員会による文章が、同研究科教授会の承認を経て掲載されました。
URL: http://www.sclib.kyoto-u.ac.jp/kusci/botanical-garden/management.html

 この文章に対する、我々京大植物園を考える会の見解を示します。

 HPでの反論の直接のきっかけとなった当会代表河野昭一による文章は、京都大学新聞に寄稿されたものなので、それを引用して内部文書で反論するよ りも、反論や抗議は京都大学新聞に掲載し、ひろく社会の判断を仰いでいただきたいと思います。それ以上に、件の寄稿を掲載に至らしめた、一連の植物園問題 の根本的解決こそを第一の目標としていだたきたいと考えます。管理運営委員会から表明されるのは常に、何かへの反論、抗議といったことばかりです。当会が 月例でおこなう観察会の平日開催は無条件で許可をいただき感謝の極みですが、その一方で、当会からの植物園の管理運営に対する具体的提案に対しては何ら回 答をいただいていません。この植物園問題に関して我々は、管理運営委員会の主体的な管理運営計画の策定と、対外的、社会的説明を求めてきました。それがな されていれば、河野による寄稿も掲載され得なかったと考えます。

 研究者や地域市民を含む見学者にとって、誰が何の専門家か、誰が優秀かといったことは、重要ではありません。「永続的で心地よい利用」が他者へ迷 惑をかけない範囲において可能であることが、第一義なのです。対象とする生物、興味、所属(京大の内外か、理学か農学か)などに関わらず、それが真理では ないでしょうか。今回掲載された管理運営委員会の文章には、植物園が実際にどのように研究利用され、樹木園と圃場などでどのように異なっているのか、そし て多様な研究を同時並行的に進行させるためにどのような方針で調整や運営が行われているのか、全く示されていません。これは、利用申請の方法を変え、許可 を厳正にしたからといって実現するものではないはずです。研究利用に伴う諸般の問題は、研究の進行とともに顕在化するのであり、異質な研究が共存する条件 を管理者が維持していくことは非常に困難だと考えられます。平成15年6月に「理学部植物園の管理・運営について」として理学部植物学教室がHPに例示し た、過去の伐採に際して発生したという「不幸」な出来事は、それが顕在化した先例であるとも考えられます。その後そのような「不幸」の再発防止がいかにし て実現されているのかをこそ、具体的に示していただきたいと考えます。

 今回掲載された文章は、全段にわたり河野代表の事実誤認に言及していますが、事実誤認であると断じるには説明不足であると考えます。具体的な数 値、客観的な判断の根拠・典拠を示しながら、京都大学の構成員や社会に対して説明し納得させていただきたいと考えます。たとえば、森林内の樹木は年間どの 程度の割合で主幹が折れるのか、倒れるのか、その割合と樹種・樹齢・樹高・直径・立地との相関の算定はいかなる先行研究に基づいているのでしょうか。そし てそれらは2002年11月に行われた園内樹木の伐採に際してどのように補正され適用されたのでしょうか。除草剤についても同様です。除草剤の種類や分量 と土壌の性質、そして園内地下の水の流れを示し、「影響が極小である」という判断の根拠を科学的に示していただかなければ、委員会の主張の妥当性は保証さ れません。うらがえせば河野代表の主張が妥当でないという根拠も、薄弱であると言わざるを得ません。この点、管理運営委員会に優秀なフィールド系研究者は 属していても、植物生態学者も林学者も農学者も属していないことが原因であると考えます。

 またその一方で、植物園は白川の上流部に立地し北部構内を含む近隣の水源地となっています。そのような土地での除草剤散布は、科学的見地からはも ちろん、下流の人々への影響を思いやれば、決してなされえないことだと考えます。ことは、京大植物園の圃場に播いた薬剤の影響が樹木園部にも及んだか否 か、にとどまる問題ではないと考えます。除草剤の「適量」を論ずる以前に、散布という行為そのものが妥当性を欠くと考えます。

 当会はこれまでの約2年間と同様に、重ねて、管理運営委員会の主体的な管理運営計画の策定と、社会的説明を求めます。その管理運営計画は、京都大学の構 成員、研究利用者、そして社会・市民によって判断されるべきであり、それこそが植物園の将来を形づくっていくのだと考えます。同時に、これまで具体的な将 来計画を提示しえなかった管理運営委員会は、その任への適性を問われるべきだと考えます。

 皆さんからのご意見もお待ちしております。

京大植物園を考える会

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