最近の植物園の状況について、また利用方法の変更について、植物園を利用している研究者の方、一般市民の方から意見・質問が寄せられていますのでご紹介いたします。
寄せられた意見・質問より
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★ 11月16日は他の所用のため出席出来ず誠に残念です。
去る9月末、理学部の関係者の方より植物園の見学許可申込手続きが変更された旨お聞きいたしました。当初、今迄とそれほど変らないものと思っておりましたところ、内容をおききして大変びっくりいたしました。これでは私共一般の観察を目的とした入園は全く容易に出来なくなります。来期より国立大法人化の運営方針が地域周辺住民に対し、あまりにも近寄れない閉鎖的なものに感じざるを得ません。
北白川西町にある植物園は同じ地域にあり、北白川学区民をはじめ、私達「白川源流と疎水を美しくする会」では疎水の環境保全と美化活動や水質管理等、長期にわたり日夜努力してまいりました。創設来80年間、疎水の水を水源として園内のあらゆる植物や池の生きもの達も育っており、疎水周辺同様私達にとって植物園は一入の思いがあります。
今日益々大学の有り方が公開の方向にあるのに、逆行しないよう願うと共に京都大学こそ他の大学の先陣をきって開かれた大学であってほしいものです。
尚、今年6月に1年間の観察期間の申込許可をいたゞいているものは終了時期迄従来通りと考えてよいのでしょうか。もしそれも駄目ということでしたら1ケ月過ぎた今も何一つ連絡もありませんし、それはあまりにも一方的で許されるべきことではないと思います。
以上よろしくお願い致します。
白川源流と疎水を美しくする会
会長 村松光男
606-8245 京都市左京区北白川平井町17-2
Tel 791-5012
★ 京大植物園の思い出
私は、入学試験より前に京大に来たことが何度かあります。2回目の京大見学が、私にとって非常に思い出深いエピソードなので、こちらで紹介させていただこうと思います。
当時、私は漠然と自然保護について学びたいと思っていました。場所は水辺、対象は淡水魚か水草に決めていました。そんなある日、市立図書館に行った折に、私は神戸大学の角野康郎先生著の「日本水草図鑑」を発見しました。何度も通い、まだ見ぬ美しい水草の姿を飽きることなく眺め続け、憧れの水草はいつしか分布図とともに記憶されていきました。そして、新たなフィールドを開拓し、一種でも多くの水草を見つけるため、自宅から程遠くない範囲を自転車で駆け回る日々。いくつか感動的な出会いもありましたが、どうしても見つからないものがほとんどでした。その最たるは、ほとんど野生絶滅の状態にあるヒシモドキとムジナモでした。思いは膨らむばかり。ある日、私は考えました。図鑑に掲載された写真は、京大植物園で撮影されている。京大植物園に行けば見られるに違いないと。
自宅は和歌山でした。京大までは、電車を使うと往復で5000円もかかります。無理です。私にはお金がありません(バイトは禁止されていました)。が、若さと自転車がありました。自宅から京大植物園までの最短ルートを探しました。往復で250km。時速20kmで走れば日の出から日没までに帰ってこられます。高2の9月、残暑の合間の、風の穏やかなよく晴れた日でした。
朝5時に自宅を出て、植物園には午後1時ごろに着きました。ムジナモは失われていましたが、水盆に植わったヒシモドキを見つけることができました。しかし、どれだけ深いのかもわからない植物園の"本体"を尻目に、私はわずか30分ほどの滞在で植物園を後にしました。行きよりもペースを上げないと日が暮れてしまいます。あの先には何があったのだろう。その疑問が明らかになり、陸上の植物にも興味を持つようになったのは、私が入学した後でした。
私は、角野先生のいる神戸大学を志望しながら、高校の担任の勧めで京都大学に進学しました。なぜ神戸大学にこだわらなかったのか。あの夏の日に見た、京大植物園の鬱蒼とした面影が、私の人生の岐路に与えた影響は大きかったのかもしれません。あの雰囲気が失われぬよう、願っております。
アジア・アフリカ地域研究研究科
細 将貴
★ 現在の植物園の管理はどうなっているのでしょうか。
現場での管理が具体的にどのような方針に立って行われているのかが伝わってこないため、利用者として不安を感じています。運営方針の決定権は運営委員会にあるのですから、我々外部からの利用者はそれに従うしかありませんが、これからも今まで通り、有効に使わせていただきたいと思っています。
そのためには、他の利用者と折り合ったりトラブルを起こさないための努力は今まで以上にやっていきます。研究報告も、きちんと出来るように、と考えています。
また、利用方針の変更をせざるを得なかったほどの「重大な問題」があったと知らされ、知らない間に研究(データ収集)に支障があったのではないかと、強い不安も感じています。
★ 南東部の通路の下草が刈られ、道が広げられています。通路の維持は利用者としてもありがたい限りですが、オオハンゲなどの貴重な植物も刈られてしまっています。芦生・尾瀬・今津のザゼンソウ生息地・屋久島の縄文杉など様々な場所で、歩道を広げないよう努めていることや、立ち入れる場所の制限をくわえられることがあります。
あの辺りにはハクショウなど貴重な針葉樹があり歩道を広げ過ぎないようにしていただけたらと思います。
★ 奥の温室裏のチャがある北側の刈り方はひどいです。全面刈り取っています。
あれでは生育する草本が著しく偏ると思います。「生物多様性」に対する運営委員会の考えに疑問を感じます。
あそこまで草刈りをしなくても、林間は閉鎖しているのだから元々草本の生育も押さえられているはずです。
★ 入り口すぐ右のセンダンの下枝は最近落とされたのでしょうか。
研究のためには、下枝の方が利用しやすく、下枝こそは植物園でこそ得られるメリットである、ということを理解してほしいと思います。
もちろん、通行を妨げるような枝を刈って頂くことは、見学者などの利用者にメリットをもたらすことでもあります。しかし、研究を進めるという点では現在のユーザー(研究者)、未来のユーザーにとってデメリットが発生しうることも理解してほしいです。
★ 先人達の大切にしてきた過去の財産を損なうことなく、現在に役立て、未来へ引き継いで行くことが今の植物園に求められています。そのために運営委員会は維持管理に、その質を求めて欲しいと思います。
一つの例に過ぎませんが、9月でしたか、機材運び出しの時、クレーン車がツバキの林床に入り、ツバキが傷みました。結局小さい1本は枯れてしまいました。これは防ぐことのできる事故でした。ケアが不足し始めているのではないでしょうか。
★ 今後、学外者は学内に知り合いがいなければ利用できないのでしょうか。
学外者でも附属図書館を利用させていただいています。紹介者は必要ありません。利用目的、資格を問わず一般利用者が附属図書館を利用できるように規定が変わったと聞いています。すでに多くの国立大学が一般に公開されています。
植物園も同様に、例えば免許などの身分証明書の提示を求めるなどすれば、学外者が利用したとしてもトラブルは起こらないように思うのですが。
★ 手続きが繁雑になり、これでは「面倒だから申請せずに済まそう」という人が増えるのではないかと心配です。また、成果が認められない場合次回の利用を制限される可能性があると思うと、成果があまり期待できないような研究がしにくくなります。
★ 2週間前に申請というのは、急に使いたいということもありますので困ります。
★ 運営方針の決定権は運営委員会にあり、我々のような利用者はそれに従い、決まりは守っていくものです。また我々考える会は研究をする団体ではなく、京大植物園に様々な動物・植物・真菌類が生きていることの恩恵に浴するものです。植物園を調査に使っている研究者の方たちから知らせを受け、我々の中の京大在籍者が園内を見回りましたが、今後頻繁に下草を刈られてしまうのだとしたら、見学者、観察者、観察会主催者、のいずれの立場にたっても、一抹の寂しさを感じずにはいられません。